■NPO法人化のメリット・デメリット

参議院の調査によると、何を期待してNPO法人化をしたかという点に関しては、「団体の社会的信用が高まる」が92.0%と最も高く、「団体としての責任が明確になる」が2位で61.9%、「会員や助成金・寄付金を集めやすくなる」が3位で48.2%、4位が「契約がしやすくなる」で42.3%、5位が「介護保険の指定業者になれる」で28.6%となっている。
具体的なメリットとしては、次のような記述が挙げられている。

「テレビ・新聞・雑誌などマスコミが積極的に取り上げてくれる」
「職員の待遇改善が図れた」
「優秀な職員や技術者を集めやすくなった」
「非営利を掲げることにより行政と連携が取りやすい」
「委託事業が受注できた」
「認知度が高まった」
「会員の志気が高まった。利用者も安心してサービスを受けられるように
なった」

一方、法人格を取得して感じている不満や心配としては、最も高いのが

「会計事務の負担の程度」46.1%。
「税負担の程度」が34.8%、
「情報公開に備えた書類の整備と保管」が23.5%、
「職員の雇用に伴う社会保険等の経費支出」が22.0%と

事務負担と支出の増加を心配する声が上位4つを占めており、運営コストの増大が最大の悩みであることが分かる。

NPO法人の数

NPO法は1998年3月19日に衆議院で全会一致により成立。同年12月1日に施行された。 NPO法人の申請数は、経済企画庁発表によると今年3月10日までの累計で、2097件。認証数は1536件、不認証の数が6件となっている。(経済企画庁のホームページにリンク)
一番申請の多い都道府県は、東京都で申請数が累計で500件。認証数が342件、不認証数が3件となっており、全体の約4分の1を占めている。

法人認証の数が大きいのは、東京都に次いで、経済企画庁の127件、大阪府の104件、神奈川県の100件、北海道の74件、福岡の57件の順になっている。

このうち不認証が6件あるが、そのうち5件は具体的な団体名が判明している。とりわけ有名なのが、経済企画庁が不認証とした「シャクティパットグル・ファンデーション」と東京都が不認証とした「日本法輪大法学会」の2つである。
「シャクティパットグル・ファンデーション」は、自己発見セミナーを行う「ライフスペース」を母胎とする団体で、経済企画庁の不認証の後、例の千葉県成田のホテルでのミイラ事件を引き起こしている。

「日本法輪大法学会」は、中国の気功集団「法輪功」の日本支部的な団体で、中国政府が暗に石原東京都知事に認証しないように求め、話題となった。

それ以外の3件の不認証団体は、不認証の理由からすると、共益を目的としていたり、特定非営利活動以外の活動を目的としているとされて、不認証となっている。残る1件は、簡単な書類ミスによる不認証で、その後ミスを訂正して再申請し、すでに認証を受けている。

公益法人制度と「NPO法」

日本にもすでに多数のNPOが活動している。
非営利とされる法人の種類もいくつもある。社団法人や財団法人、宗教法人、生協、信用金庫、信用組合、社会福祉法人、学校法人、労働組合、農協などだ。
また、このうち、社団法人、財団法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人、労働組合などは、収益事業を除いて非課税とされており、さらに学校法人や社会福祉法人、および社団法人や財団法人のうちのごく一部は、寄付金に対する税制優遇措置の資格を持っている。

こういう点を捉えれば、日本でもすでにNPO法があるといえなくもない。
そこで、新しい特定非営利活動促進法を「NPO法」と呼ぶのはおかしい、という声が上がるのも当然だろう。
しかし、ここでわざわざNPO法という名前が使われるようになった背景には、日本のNPOの法的仕組みと海外のNPOの法的仕組みの間にある大きな違いが注目されたことによる。
つまり、日本の現行のNPOは、そのほとんどが、行政による許認可でしばられており、行政の監督を受け、行政の下請けに使われることが多く、行政の縦割りの範囲内でしか動けない仕組みになっている。
一方で、海外のNPOの仕組みは、民間が自由に法人格を取得でき、また行政の下請けでない活動を積極的に行うことができるようになっている。また、税制もそのような民間の活動を支援するように作られている。
つまり、民間本位のNPO制度が海外では普通なのである。
そこで、日本でNPO法と言う場合には、特に今まで制度の欄外に置かれていた市民団体を対象としながら、官庁の縦割り・公益の論理になじみにくい自発的な民間団体に簡易に法人格を付与することと、税制上の優遇措置(課税の優遇と寄付金控除の対象となれる資格)を与えることの2つを意味するようになったのである。
このような観点からすれば、NPO法のポイントは次のようなものであるといえる。

*自発的な民間非営利団体が官庁の裁量によることなく簡易に法人格がとれる。
*民間非営利団体が官庁の縦割りの壁とは無関係に活動できる。
*税制上の優遇措置は法人格付与と別に定まっている。
*民間非営利活動(市民活動)を活発にするために、個人や団体の寄付金控除の利用資格がある。

「特定非営利活動法人の活動・運営の実態に関する調査」要旨
平成12年4月25日

1.目的

特定非営利活動法人の活動・運営上の特徴を把握するとともに、特定非営利活動促進法の施行後2年以内の見直しという国会附帯決議を踏まえ、今後の特定非営利活動法人制度のあり方を検討する際の基礎資料づくりを目的とする。

2.調査方法
(1)アンケート調査
@法人に対するアンケート
A非申請団体に対するアンケート
B所轄庁に対するアンケート
(2)ヒアリング調査
3.調査結果の概要
(1)、(2)では法人に対するアンケートについての集計・分析を、(3)では所轄庁に対するアンケートの集計をそれぞれ行い、(4)でそれらを比較している。
(1)特定非営利活動法人の活動・運営の実態(法人に対するアンケート集計結果)
@組織概要等
a)活動概要
・法人の76.3%は、法人格申請以前から任意団体として活動している実績をもつ。
・最も中心となる活動分野としては、45.1%の法人が「保健・医療・福祉」を挙げている。
b)組織体制
・常勤スタッフは68.1%の法人が有している。また、有給の常勤スタッフがいると回答した法人は全体の43.4%。
・非常勤スタッフは81.5%の法人が有している。また、無給と回答した法人が51.9%。
c)法人格の取得理由
・法人格取得の理由としては、「対外的な信用が高まるから」が81.4%で最も多い。
A収入・支出などの財政状況
a)法人の収入構造
・会費・入会金収入のある法人は90.6%で、全体の66.3%の法人が1円〜200万円未満。
・特定非営利活動に係る事業収入のある法人は69.1%。1円〜200万円未満の法人が22.4%となっている一方で、1,200万円以上の法人が17.2%見られるなど、その収入規模には差がある。
・寄付金収入のある法人は60.8%で、全体の46.5%の法人が1円〜200万円未満。
b)支出構造
・特定非営利活動に係る事業費支出がある法人は全体の87.3%で、その支出規模は、1円〜200万円未満が33.7%となっている。その一方で、1,200万円以上の法人が16.8%見られる等、その支出規模に差がある。
・特定非営利活動に係る人件費を支出している法人は全体の60.4%。
c)具体的な活動・事業のタイプ
・「無償・無料(特定非営利活動に係る事業)」では「機関誌・広報紙の発行」(46.0%)、「相談活動(電話・窓口等)」(40.1%)、「資料や情報の収集・提供」(39.8%)の割合が高い。
・「有償・有料(特定非営利活動に係る事業)」では「人や労力を動員(派遣)してのサービス」(31.1%)、「イベント・シンポジウム等の企画・開催」(24.0%)の割合が高い。
・「NPO法上の収益事業」を実施するとしている法人は32.3%。しかし、実際に収益事業収入があると回答している法人は18.1%である。
d)寄付の募集方法
・寄付の募集方法としては、「口コミ」が最も多く33.0%、次いで「文書にて寄付協力を要請している」(32.3%)、「広報誌等に寄付協力を掲載している」(21.3%)。
e)将来的な収入・支出構成の意向
・将来的に充実させたい支出は、「活動協力者への実費分の支払い・謝礼等の充実」が最も多く65.3%。次いで、「事務局機能の充実」、「有給の事務局スタッフの人件費」。
B特定非営利活動促進法に対する考え方
a)事前相談
・申請に当たり事前に所轄庁へ相談を行った法人は89.7%。
・事前相談が「適切であり役に立った」と回答した法人は65.4%。
・事前相談で役に立った点としては、回答した法人のうち約7割が定款や事業計画書、収支予算書等の書類の作成や申請の手続き関係を挙げている。
b)税制優遇措置
・税制優遇措置が必要と回答した法人は95.2%。
・必要な税制優遇措置として最も多く挙げられたのは「寄付金の所得控除、又は損金算入など寄付者に対する優遇措置」で、次いで「特定非営利活動に係る事業に対する法人税の減免」となっている。
・税制優遇措置の適用方法としては、「範囲を限定し厚い措置を望む」が54.4%と過半数。
c)特定非営利活動促進法の見直し
・活動分野、申請時の提出書類、申請から認証までの期間、所轄庁への報告事項、所轄庁の監督、情報公開のいずれについても、「現状のままでよい」とする回答が過半数。
(2)特定非営利活動法人の特性(法人に対するアンケート分析結果)
@特定非営利活動法人のタイプ別特性の整理
a)活動概要・組織体制
・活動分野分類から見ると、「国際交流・協力系」の法人で法人格申請前から任意団体として活動していたものが多い。また、「教育・文化・スポーツ系」、「国際交流・協力系」では比較的会員数が多い。
b)法人格を取得した理由
・法人格を取得した理由は、各分類とも第1位に「対外的な信用が高まる」が挙げられているが、第2位以下については、以下のような特徴が見られる。
・「国際交流・協力系」では「海外での活動がしやすくなるから」の割合が高い。
・「地域社会系」では「営利目的でないことを理解してもらえるから」、「会員や協力者が得やすくなるから」の割合が高い。
・「環境保全系」では「収入を伴う活動・事業が行いやすくなるから」の割合が高い。
c)1年の収入構造
・「地域社会系」においては、会費・入会金収入が少額(200万円未満)であるとする法人の割合が高い。
・「地域社会系」の法人では、特定非営利活動に係る事業収入が比較的大きい傾向にある。
・「地域社会系」、「教育・文化・スポーツ系」、「会費型」の法人では、寄付金収入が「無し」とする割合が高い。
・「教育・文化・スポーツ系」や設立時期の新しい法人では、補助金・助成金収入が「無し」とする割合が高い。
d)具体的な活動・事業のタイプ
【「無償・無料で行う特定非営利活動に係る事業」について】
・活動分野分類から見ると「社会福祉系」で「相談活動」の割合が高い。また、収入規模・構造分類から見ると、「低収入事業型」、「低収入寄付・補助金型」で「人や労力を動員(派遣)してのサービス」の割合が高い。
【「有償・有料で行う特定非営利活動に係る事業」について】
・活動分野分類から見ると「国際交流・協力系」、「地域社会系」で「実施しない」とする割合が高く、「社会福祉系」で「人や労力を動員(派遣)してのサービス」の割合が高い。また、事業型の法人で「人や労力を動員(派遣)してのサービス」の割合が高い。
A非申請団体との比較から見た特定非営利活動法人の特性
a)活動概要
・最も中心となる活動分野について見ると、法人・非申請団体ともに「社会福祉系」が最も高い割合となっている(法人50.9%、非申請団体35.5%)。
・法人は非申請団体に比べ、行う活動・事業の範囲が広い傾向にある。また、法人の73.5%が「有償・有料」の活動・事業を実施するとしているのに対し、非申請団体では22.0%となっている。
b)1年間の収入構造
・全般的に、法人の方が収入規模が大きい傾向にある。
・収入構成としては、法人の方が会費・入会金収入、事業収入、寄付金収入を得るとしている割合がそれぞれ高く、特に事業収入、寄付金収入においてその差が顕著である。一方、補助金収入を得るとしている割合は非申請団体の方が高い。
c)1年間の支出構造
・支出構造を見ると、事業費については法人の73.6%、非申請団体の78.7%が支出していると回答している。
d)寄付金の募集方法と将来的な収入構成の意向
・寄付の募集については、法人では56.1%が実施していると回答しているのに対して、非申請団体では20.4%となっている。
・将来的な収入構成の意向については、法人が「事業収入を中心としていきたい」(35.9%)、「多様な財源を持ちたい」(31.6%)という意向が多いのに対して、非申請団体では「会費を中心としていきたい」(38.6%)、「補助金・助成金を中心としていきたい」(34.6%)という意向が多い。

(3)所轄庁における特定非営利活動促進法の運用実態
        (所轄庁に対するアンケート集計)  ※回答総数は48所轄庁。
@特定非営利活動法人設立認証などの法の運用
a) 事前相談
・事前相談で団体に理解不足や誤解があった点を尋ねたところ、最も多いのが「特定非営利活動に係る事業と収益事業の区分がわからない」で、次いで「NPO法人になると行政支援や税優遇等のメリットがあると誤解している」、「認証を行政からのお墨付き的なものとして評価している」。
b)情報公開
・縦覧によるチェック機能は、「あまり機能していない」とするのが26所轄庁、「全く機能していない」とするのが10所轄庁で、あわせて7割強。
c) 運用上の課題、問題点
・運用上の課題、問題点としては、認証に関するものが最も多く、次いで認証後の監督に関するもの、事前相談に関するものとなっている。
・所轄庁が法人に期待している点として多く挙げられたのは、「行政がカバーできない部分のパブリックな活動に期待」、「行政とのパートナーシップ」。
・一方、不安に思っている点としては、「活動の継続」や「法人としての適正な事務処理・会計処理ができるか」等の団体の運営に関するものが最も多く、次いで「法を隠れ蓑にした不法行為を懸念するもの」、「法違反の場合の対応やその場合の所轄庁の責任について」。
A特定非営利活動促進法の見直しについて
a) 要件・定義等について
・法律上の定義についての設問である「活動分野」「不特定多数の利益の増進に寄与」「特定非営利活動を主たる目的」「社員の資格の得喪に不当な条件を付さない」「営利を目的としない」「特定非営利活動に係る事業と収益事業の区分」のいずれについても「明確に定義すべき」とする回答が最も多かった。
・設立申請時の提出書類については「簡略化すべき」が27所轄庁。
・設立申請から認証までの期間、所轄庁への毎年の報告事項、所轄庁の監督、情報公開の内容、書類の縦覧・閲覧ではいずれも「現状のままでよい」とするものが最も多い。
・認証制度の見直しについては「届出制などの準則主義へ移行」が39所轄庁と大半。
b)税制優遇措置
・「一定の条件を満たした特定非営利活動法人には税制優遇措置が必要」とするものが45所轄庁とほとんどを占める。
・必要な税制優遇措置として最も多い回答は「寄付金の所得控除又は損金算入など寄付者に対する税制優遇措置」で、次いで「みなし寄付金制度の適用」となっている。
・税制優遇措置の対象となる法人の基準として最も多く挙げられたのは「活動・事業内容の公益性に着目した基準」で、次いで「団体の収入面に着目した基準(パブリックサポートテスト等)」となっている。
・所轄庁が税制優遇措置の認定機関となることについては、「問題がある」が45所轄庁と大半。
(4)特定非営利活動促進法の見直しに向けて
   (法人と所轄庁の意見の比較・非申請団体の法に対する意見)
@法人と所轄庁との意見の比較
a)要件
・活動分野については、法人、所轄庁とも「現状のままでよい」が過半数を占めている。
・法に定められた用語・要件の定義に関して、所轄庁では「特定非営利活動に係る事業と収益事業の区分」、「社員の資格の得喪」、「営利を目的としない」、「不特定かつ多数」のいずれの項目についても「明確化する必要がある」とする回答が過半数を占めているが、法人では「特定非営利活動に係る事業と収益事業の区分」が31.7%と比較的高い以外は、いずれも1割未満。
b)手続き
【提出書類について】
・申請時の提出書類については、法人は「現状のままでよい」が61.8%と最も多いが、所轄庁は「簡略化すべき」が61.4%と最も多い。
【申請から認証までの期間について】
・設立申請から認証までの期間については、法人、所轄庁とも「現状のままでよい」が最も多い。
・「短縮すべき」は、法人で38.3%、所轄庁で14.9%となっている。
【所轄庁への報告事項について】
・所轄庁への報告事項については、法人、所轄庁とも「現状のままでよい」が最も多いが、次に多い回答は法人が「簡略化すべき」(23.5%)であるのに対して、所轄庁は「充実すべき」(25.5%)となっている。
・簡略化の理由として法人は、法人の事務処理負担の軽減を多く挙げている。一方、所轄庁は、充実の理由として「市民のチェックを受けるために公開の情報を拡大すべき」、「事業の実態がわかるような決算関係の書類の報告を義務付けるべき」を挙げている。
【所轄庁の監督について】
・所轄庁の監督については、法人、所轄庁とも「現状のままでよい」が最も多い。
・緩和の理由として、法人は、「報告書類などポイントを絞った監督にし手続上の監督は緩和すべき」、「団体の自主性を尊重する点から緩和すべき」を挙げている。一方、所轄庁は、「監督権限が限定されているのに責任が重い」、「市民によるチェックや活動の性格から監督を緩和すべき」を挙げている。
・強化の理由としては、法人は、「税金・営利活動・法人の私物化の点から活動内容を監督すべき」を挙げている。一方、所轄庁は「市民監視は理想論であり、何かあった場合の責任は所轄庁が負うことになる」を挙げている。
【申請書類の縦覧、毎年の事業報告書の閲覧等情報公開について】
・情報公開の内容については、法人、所轄庁とも「現状のままでよい」が最も多いが、次に多い回答は、法人の「簡略化すべき」(17.3%)に対し、所轄庁は「充実すべき」(31.9%)となっている。
・法人は、簡略化の理由として「事務負担の軽減」の観点や「プライバシーの尊重」から一部書類を公開からはずすことを要望している。
・所轄庁は、充実の理由として「市民監視の観点から有効性を高めるため公開の書類の記載事項の基準を明確にすべき」を挙げている。
c)税制優遇
【税制優遇の必要性について】
・税制上の優遇措置については、法人の96.0%が「必要である」と回答し、所轄庁の95.7%が「一定の条件を満たしたNPO法人には必要である」と回答している。
【必要な税制優遇措置について】
・必要な税制優遇措置については、法人、所轄庁とも「寄付金の所得控除、又は損金算入など寄付者に対する優遇措置」が最も多く、次いで「特定非営利活動に係る事業に対する法人税の減免(免除)」。
A非申請団体の特定非営利活動促進法に対する考え方
・特定非営利活動促進法について、内容をよく知らない団体が過半数である。
・回答した8割以上の団体が「法人格は必要ない」(47.5%)もしくは「当面申請するつもりはない」(35.2%)としている。
・申請を考えない理由としては、「法人格がないことについて困っていない」が最も多く62.2%、次いで「法の要件に団体の活動内容・形態が該当しない」。

特定非営利活動法人の活動分野について
(平成12年3月31日現在)
特定非営利活動法人の定款に記載された活動分野を集計したものです。
(平成12年3月31日現在:1724法人の定款から集計)

定款に記載された特定非営利活動の種類(複数回答)

保健・医療又は福祉の増進を図る活動 1137 66.0%
社会教育の推進を図る活動 580 33.6%
まちづくりの推進を図る活動 549 31.8%
文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 433 25.1%
環境の保全を図る活動 399 23.1%
災害救援活動 154 8.9%
地域安全活動 121 7.0%
人権の擁護又は平和の推進を図る活動 236 13.7%
国際協力の活動 401 23.3%
男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 165 9.6%
子どもの健全育成を図る活動 539 31.3%
団体の運営又は活動に間する連絡、助言又は援助の活動 548 31.8%

(注)一つの法人が複数の活動分野の活動を行う場合があるため、合計は100%になりません。

法人が定款に記載している分野の数

1分野 530 30.7% 7分野 46 2.7%
2分野 369 21.4% 8分野 34 2.0%
3分野 281 16.3% 9分野 18 1.0%
4分野 185 10.7% 10分野 7 0.4%
5分野 131 7.6% 11分野 2 0.1%
6分野 92 5.3% 12分野 29 1.7%

平成9年度人材育成研修プログラム開発に関する調査(委託調査)
平成10年6月
国民生活局
[調査の趣旨]
 近年、市民活動団体の活動が活発化していることに伴い、市民活動団体の中心的な役割を果たすリーダーのために、組織運営のための研修機会を充実することが求められている。このため、経済企画庁では、市民活動団体の活動促進への環境整備を目的として行われた平成8年度「人材育成研修プログラム開発の関する調査」の成果である概論的な研修資料に引き続き、平成9年度においては、市民活動団体の1年間の運営を想定し、組織運営に参考となることがらについての調査を行い、市民活動団体の役員やスタッフを対象とした研修資料(テキスト)を作成した。

 本報告書の作成にあたっては、市民活動団体の活動内容や規模にかかわらず共通する課題について取り上げることとし、調査により収集した事例を盛り込み、市民活動団体の組織や事業の体制を整えるための「ガイドブック」、あるいは、組織や事業の一層の展開を計画する場合の「チェックリスト」として利用されることを想定した。
 調査にあたっては、(社)社会開発研究所に調査を委託した。
[調査の方法]
 (社)社会開発研究所が、市民活動団体や支援機関等の有識者による委員会(委員長:早瀬 昇(社福)大阪ボランティア協会理事・事務局長ほか委員4名)を設置し、委員の総合的な指導・助言のもとに、国内外の市民活動団体や支援機関等に対するヒアリング調査を参考として、検討を行った。
[報告書(テキスト)の内容]
(1) 事業計画の立案
 @ 組織運営のための規約
 A 事業計画と「使命」の整合性
 B 事業計画の立案のための組織のあり方
 C 「到達目標」と「個別目標」など
(2) 事業計画の実施
 @ 事業実施のための対応
 A 実施計画書の作成と管理
 B 作業計画書の作成と管理  など
(3) 事業の評価と報告
 @ 評価と報告の関連性
 A 事業の評価
 B 事業評価の方法
 C 事業評価の重要性 など
[今後の予定]
 本報告書は、「事業プランの立案と実施―市民活動団体の運営のために―」として、大蔵省印刷局から出版されている。
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「平成9年度人材育成研修プログラム開発に関する調査」の概要
T 調査の概要
1 本調査の背景と目的
 私たちの社会には、従来から、行政と企業という2つの大きな部門があると言われてきました。通常、行政を第1セクター、企業を第2セクターと呼んでいます。近年、これらの第1セクターや第2セクターに加えて、行政や企業から独立して、個人の自由な発想のもとに様々な活動を展開する第3のセクターとしての市民活動団体の重要性が認識されつつあります。
 市民活動団体の活動は、民間の活動であり、かつ「非営利活動」という特徴をもっており、組織の形態もおのずから行政や企業のそれとは異なっているといえます。そして、一般的に市民活動団体の規模が小さいことや、活動の開始が比較的新しい団体が多いことなどによって、組織運営のノウハウの蓄積が十分ではない状況にあるといえます。
 いま、このような市民活動団体の組織運営のあり方が問われる時代になっています。ボランティアなどの多くの市民が参画する市民活動団体の組織は、企業や行政などの組織よりもむしろ運営が難しいとさえ言えます。多くの市民活動団体のリーダーが、日常の活動を推進する際に悩んでいるのも、この組織運営の問題であるといっても過言ではないでしょう。
 本調査は、市民活動団体の役員やスタッフの組織運営についての知識を高め、活動の一層の推進をはかるための一助として利用いただくことを目的として行ったものです。
  検討委員会
   委員長:早瀬 昇 ((社福)大阪ボランティア協会理事・事務局長)
   委 員:椎野 修平(かながわ県民活動サポートセンター交流サポート課長)
       島田 京子(日産自動車株式会社 広報部社会文化室主管)
       田中 弥生(笹川平和財団 プログラム・オフイサー)
       萩原 善之(中部リサイクル運動市民の会 代表)
2 報告書(テキスト)のなりたち
(1) 報告書(テキスト)の構成
 本年度の調査研究は、市民活動団体のリーダーが組織を運営していくにあたって参考になることがらをより具体的なレベルでまとめたテキストの作成を目指しました。
 市民活動団体は、規模の大小を問わず、参加者や関与者が参画をした組織であるといえます。それぞれの団体がその使命にしたがって活動を推進していくためには、各自の組織をいかにうまく運営していくかが課題になります。ここでは、市民活動団体の1年間の運営を想定し、「事業計画の立案」「事業計画の実施」「事業の評価と報告」に至る一連の流れを想定しました。
(2) 報告書(テキスト)の利用方法について
 市民活動団体の活動内容は多様であり、その規模もさまざまです。活動の推進を図っていくためには、規模の小さな組織が、規模の大きな組織に変革していくことが必ずしも望ましいとは言えないでしょう。
 このテキストは、市民活動団体の活動内容や組織規模にかかわらず、多くの団体に広く活用していただくことを想定して作成しました。そのため、それぞれの市民活動団体の組織運営について、個別の課題というよりは、共通する課題についてとりあげています。したがって、このテキストには、次のような利用方法があると思います。
 ・市民活動団体の組織や事業の体制を整えるための「ガイドブック」
 ・組織や事業の一層の展開を計画する場合の「チェックリスト」
U 報告書の概要
1 事業計画の立案
(1) 事業計画の立案のための組織のあり方
 市民活動団体の組織は多様であるために、タイプ分けすることは非常に困難です。
 通常、市民活動団体が発足当初であり、比較的規模の小さい段階では、メンバー全員が参加する会議で団体の意思決定をしていきます。その後、メンバー数が増えてくると「役員」で構成する役員会が中心となって、事業運営にあたることが多くなり、一般メンバーを含めた会員総会が団体の最高議決機関になると思います。このように、市民活動団体の規模が大きくなるにつれて、事業の範囲が広がり、また参加者の人数も多くなってくるといった事情から、組織形態がより分化していく傾向がみられます。
(2) 「到達目標」と「個別目標」
 「使命」は、市民活動団体の果たすべきことがらを世間に対して総括的に宣言したものですが、市民活動団体の事業計画を考えた場合には、「使命」を実現するためのより具体的な活動指針を示すことが必要となります。そのため、ここでは市民活動団体の事業計画に関して、「到達目標」と「個別目標」という新たな活動指針を導入することを考えてみます。
 ここで「到達目標」とは、「使命」を到達するために実践をし到達すべきことがらを明確に示したもの、「個別目標」とは、「到達目標」を達成するために具体的な要件と実践方法を示したものということができます。
 全体の事業量については、組織として年間にできる事業の総量、収入見込み等の予算額を検討し、最終的に決定されることになります。
 市民活動団体の事業計画の作成においては、@個別の事業計画→A各事業の優先順位の検討→B団体全体の事業計画というステップを踏むことになります。
 複数ある「到達目標」や「個別目標」は相互に関連をもたせるように、配慮することが必要となるでしょう。
(3) 個別目標の設定
 「個別目標」の設定にあたっては、なるべく多くの参加者が討議に加わり、その達成が組織にとっても自らにとっても意味のあることを全員が納得していることが必要です。つまり、「個別目標」の設定が参加者の合意のもとになされていることが大事なのです。そうでないと、実施の過程で不平や不満がおきやすくなり、ヤル気が急激に失せていきます。「個別目標」の設定に、参加者が自らかかわったというプロセスが重要なのです。
(4) 事業に対する予算編成
 市民活動団体の活動に予算をたてることが必要かどうかということについては、いろいろ議論があると思いますが、組織を民主的に運営するには、市民活動団体においても、年間の事業計画をたて、その実施を図るための資金の収支を裏付ける予算を見込んでそれを明らかにしておく方が望ましいと考えられます。
 また、市民活動団体が行政や企業、財団などからの支援・助成をうけようとする場合には、組織運営のための収支や、支援・助成をうけた資金に対する収支を明らかにすること求められることが多いのです。市民活動団体への参加者や関与者が会費などの拠出をしている場合には、年間の事業を開始する前にこれらの資金に対する使途を明らかにしておくことが望ましいといえます。
 しかし、市民活動団体の場合、現実的には予算をたてずに活動が始まってしまうこともあると思います。年度のはじめには収入が明確ではなく、事業の展開にともなって収入を図るということも考えられるからです。このような場合には、民主的に組織を運営し、外部に対して活動内容の理解を得るために、決算を作成して公表しておくことが必要となると考えられます。
2 事業計画の実施
(1) 事業実施のための対応
 事業計画の実施にあたっては、総合的な計画・調整が求められます。
 事業に対しては、市民活動団体のスタッフメンバー、一般メンバーなどの構成員(あるいは会員)などのほかに、市民活動団体のサービスの享受者や活動の支援者も参加することが考えられます。また、事業実施の当日には従来は面識のなかった新たな支援者(ボランティアなど)が参加することもあると思います。したがって、事業の実施にあたっては、「実施グループ」などの組織をもつか否かを問わず、総合的な計画立案とその調整を行う実施担当者が必要になってきます。
(2) 事業計画の変更
 市民活動団体では、基本的にはあらかじめ計画された事業を年間を通じて実施していきます。しかし、市民活動団体の事業は一概に固定したものではなく、たとえ年度の計画として実施される事業であっても途中で変更したり、実施をとりやめることもあり得ます。また市民活動団体では、種々の事情によって、年度当初の事業計画にない事業を引きうけて実施するといった事態も起こり得ます。
 事業計画に沿って事業を実施しないのは、一見不合理に見えるかもしれませんが、使命を達成するためには、比較的自由な活動が許されるのも市民活動団体の重要な特性であるということができます。
 市民活動団体の実施する事業の変更についてまとめてみますと、
a.年度の計画として実施される事業の内容やスケジュールを途中で変更した
b.年度の計画にない新たな事業を実施することにした
c.年度の計画として実施していた事業を途中で中止した
という3つの事態が考えられます。これらはいずれも市民活動団体の使命に照らして妥当な結論であれば、原則的には容認されることであると思います。
3 事業の評価と報告
(1) 評価と報告の関連性
 市民活動団体では、年間を通じて個々の(複数の)事業プランが実施にうつされます。これらの事業プランが実施された後には、個々の事業ごとに、事業実施にかかわる評価を行い、その成果を参加者や関与者に報告していくことが必要です。
 そして年度の終了時点で開催される理事会や総会では、これらの個々の(複数の)事業プランに関する評価と報告をまとめて、「年度を総括した事業報告」をすることが必要です。
(2) 事業評価の重要性
 市民活動団体が自分の活動についての評価を行うことには、次にあげるような意義があると考えられます。
@ 対内的な意義
 ・現行の事業に対する改善
 ・新たな事業の創造
 ・共感形成
A 対外的な意義
 ・情報公開
(3) 年度を総括した事業報告
 市民活動団体の活動にはたくさんの人たちが関わっています。たとえば、組織に参加している人たち、サービスを享受している人たち、活動への支援をしている人たちなどがあげられるでしょう。したがって、市民活動団体では、理事会、総会等を開催し当該年度の活動の内容について報告を行い、これらの活動の内容を会員以外にも広く公開することにより、活動の重要性を認識してもらうことも必要でしょう。このことは、新たな参加者や支援者の拡大等に寄与することにもなります。
(4) 次年度への事業の継続
市民活動団体の活動は単年度で終わるわけではなく、次年度以降にも継続して行われるものです。当該年度の事業報告は、年度当初に想定していた種々の事業が十分な成果をあげ得たかどうかを判断することが重要な視点となりますが、それに加えて、当該年度の成果をもとにして、次年度以降の活動をより適正に決定していくための貴重な情報として活用することができます。

NPO法人は、できたばかり。
2000年4月13日掲載

 「朝日新聞」は4月8日号の朝刊1面において、「介護サービス、NPO参入1%」と報じ、あたかもNPOの進出がきわめて少ないように書いている。これは全ての「事業者」から社会福祉法人と医療法人をのぞいた18,840事業所の内に、NPO法人は274事業所でしかないと指摘しているもの。これについて、私はつぎのように考えている。
 NPOを考える時に、狭義のNPO法人のみを分析することは問題を正確に見ることにならない場合が多い。なぜなら、広義のNPOは一方における公益法人、他方における任意団体までを含むわけであり、これらを視野にいれなければNPOを正確に捉えられないからである。
 そして、NPO法人に限っていえば、1998年12月からの施行から1年4ヶ月を経て(2000年3月末)、1724団体が認証を得た程度であり、まだ社会的な影響力を確保する以前の段階といえる。
 以上のことを前提にして、もう一度ホームヘルパーの派遣をおこなう「指定居宅訪問介護事業者」について見てみよう。このサービスに注目するのは、介護保険サービスの骨格をなすものであり、NPOが最も関心を持ち、進出に意欲的な分野だからである。
 
 介護事業者の総数は2000年3月31日現在、9174事業所。この中でNPOは、NPO法人が185、JAが230、生協が100、高齢者生協が100の事業所となっている。
 また、NPOであっても、介護保険サービスについては有限会社などの営利事業者を設立しておこなう団体もあり、総計は650事業所程度である。これは訪問介護事業者の中において7%のシェアーを占めている。
 このように見てくると、NPOもなかなかのものであり、資金力もない中でよく頑張っている――というのが正当な評価になるのではないだろうか。

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